ユニバーサルデザインStory

もっとつながろう、もっと楽しもうユニバーサルデザインStory

未来へ歩むヒト・モノ・コトを紹介するコラムです。

Story31
インタビュー

「風を切って歩く」喜びを補助犬と。補助犬との暮らしに見る外出のリアルとトイレ事情

story31 「風を切って歩く」喜びを補助犬と。補助犬との暮らしに見る外出のリアルとトイレ事情

道を歩く鈴木さんと、角で立ち止まる盲導犬のデイズくん

「補助犬」という言葉を聞いたことがありますか? 補助犬には盲導犬、介助犬、聴導犬の3種があり、障がいのある方の生活をサポートしています。そうした補助犬が実際に活躍していることや、お店や施設に補助犬の同伴を受け入れる義務があるといったルールなど、現状を知っている人はまだまだ少ない様子です。そこで今回は、福島県障がい福祉課の職員でご自身も盲導犬ユーザーである鈴木祐花さんに、補助犬の役割や外出時の課題、トイレ事情などについて盲導犬をベースに教えていただきました。

  • 鈴木祐花さんの顔 盲導犬ユーザー
    鈴木祐花(すずき・ゆうか)さん
    1990年福島県生まれ。未熟児網膜症を機に、現在、右目は光がわかる程度、左目は全盲に。大学で社会福祉を学んだ後、2013年に福島県庁に入庁、2018年より障がい福祉課に所属。2016年から盲導犬と暮らし始め、デイズくんで2頭目。
  • デイズくんの顔 盲導犬
    デイズくん
    日本盲導犬協会出身。ラブラドール・レトリバー、現在6歳。

補助犬とは?

目や耳、手足に障害のある方をサポートする盲導犬、介助犬、聴導犬のこと。~中略~身体障害者補助犬法に基づき、必要な訓練を受けています。

・盲導犬…見えない、見えにくい人が安全に歩けるようにサポートします。障害物を避けたり、立ち止まって曲がり角や段差を教えたりします。

・介助犬…手や足に障害のある人の日常生活動作をサポートします。物を拾って渡したり、指示したものを持ってきたり、脱衣の介助などを行います。

・聴導犬…聞こえない、聞こえにくい人に必要な生活音を知らせます。玄関チャイム音、メールやFAXなどの着信音、赤ちゃんの泣き声、車のクラクション等を聞き分け教えます。

(出典:厚生労働省「もっと知ってほじょ犬」より抜粋)

盲導犬と歩いて、初めて「風を切って歩く」という表現を理解できた

盲導犬と歩いて、初めて「風を切って歩く」という表現を理解できた

鈴木祐花さん(以下、鈴木)

 まずは、鈴木さんご自身について教えてください。

鈴木:

妊娠7か月の早産で生まれ、未熟児網膜症を発症しました。右目は0.01程度で左目はもう少し見えていたそうですが、3歳のときに網膜剥離を起こして左目の視力が急激に落ちたと聞いています。10歳のときに緑内障と白内障を併発して、右目はうっすらと光がわかる程度、左目は全く見えない状態になり、その後は変わっていません。見えていた頃の記憶があるので、基本的な色や形などは頭の中でイメージすることができます。

小学校から高校まで福島県立盲学校(現視覚支援学校)に通い、大学で社会福祉を学んだ後、2013年に福島県の職員になりました。2018年から障がい福祉課で働いています。

室内でソファに座り微笑む鈴木さんと、傍に座る盲導犬のデイズくん

ご自身の経験や大学で学んだことを活かしたいと思って希望を出し、障がい福祉課に配属になりました

 障がい福祉課ではどんな仕事をされているのですか?

鈴木:

障がい福祉課にはさまざまな仕事がありますが、私は障がいの理解促進に関する仕事を担当することが多く、民間企業向けに合理的配慮について伝えるセミナーを開いたり、「福島県障がい者芸術作品展」の企画や広報をしたりしています。最近では会津若松で開催した盲導犬のセミナーを担当しました。飲食店や宿泊施設で働いている方などに向けた、盲導犬に興味があれば誰でも参加できるセミナーです。

日本盲導犬協会の職員さんと会津若松にお住まいの盲導犬ユーザーを講師に招いて講義をしてもらい、飲食店や宿泊施設に盲導犬が来たときにどう接客すればいいかといったロールプレイも行って、参加者に好評でした。自分の生活にも密接に関わっていることですし、この仕事にはやりがいを感じています。

 福島県庁にはどうやって出勤していますか?

鈴木:

盲導犬のデイズと一緒に歩いて出勤しています。私の仕事中は、デスクの横にマットを敷いてデイズに待機してもらっています。ほかの職員のみなさんには「デイズにとっては仕事中なので、話しかけたり触ったりしないでくださいね」とお伝えしていますが、犬好きの方がときどき癒しを求めて見に来たりします(笑)。

マナーコートを着てハーネスバッグを着けた盲導犬のデイズくんのアップ

デイズくんは鈴木さんにとって2頭目の盲導犬。2022年から一緒に暮らしています

 盲導犬との生活を選んだのはなぜですか?

鈴木:

子どもの頃から映画やドラマ、本を通して盲導犬に興味は持っていて、「自立したら盲導犬と暮らしたい」と思っていました。実家でも犬を飼っていましたし、もともと犬が好きなんです。また、社会人になってから最初の3年間は実家から電車で通勤していましたが、人に当たらないようにいつも神経を使っていました。路上駐車しているトラックのサイドミラーに顔が当たったり、白杖を車に轢かれて折ってしまったりしたこともありましたね。

そのように通勤に対して心理的な負担を感じていたときに、近くで盲導犬の体験歩行会があったんです。初めて歩く道でしたが、人混みを避けてくれるし、段差や曲がり角もちゃんと教えてくれて、盲導犬と歩く快適さと安心感を知りました。小説などで「風を切って歩く」という表現がありますよね。「ああ、こういうことか」と初めて実感しました。外出時のストレスが減って行動範囲が広がると思い、盲導犬を迎えることを決めました。

 盲導犬を迎えるまでにどのようなステップを踏みましたか?

鈴木:

私の場合、まずは1泊2日で日本盲導犬協会仙台訓練センターの体験説明会に参加し、そのまま盲導犬希望の申請書を提出しました。その後2回ほどの家庭訪問で、生活環境や盲導犬に対する希望などの聞き取りがありました。盲導犬と一緒に最寄り駅まで歩く体験もしましたね。

体験説明会から1年後、仙台訓練センターで自分のパートナーとなる盲導犬との共同訓練に参加しました。盲導犬の歴史や法律、健康管理などの講義を受け、実際にバスに乗って目的地まで行く実習などを行う内容で、初めて盲導犬を持つ人は4週間、2頭目以降は2週間、この訓練に参加する必要があります。訓練士から認定されて盲導犬使用者証が発行され、盲導犬との暮らしを開始しましたが、お互いに息が合ってスムーズに歩けるようになるまでには1年ほどかかりました。

  • 室内でケージからこちらを見ているデイズくん

    盲導犬は、盲導犬育成団体がユーザーと犬の相性を考えてマッチングします

  • カーペットの上に寝転がるデイズくん。鈴木さんがおなかのあたりに手を置いている

    取材中はおとなしく待っていてくれたデイズくん。ケージから出るとはしゃいでクッションで遊んだり、鈴木さんに甘えたりしていました。仕事中はキリッとしていますが、家の中では甘えん坊のようです

盲導犬の役割は曲がり角・段差・障害物を教えること

盲導犬の役割は曲がり角・段差・障害物を教えること

 歩行時の盲導犬の役割について、主なポイントを教えてください。

鈴木:

盲導犬の育成団体は全国に11あり、団体によって訓練内容が少しずつ異なりますが、どの団体にも共通しているのは3つ。曲がり角と段差、障害物を教えることです。

よく誤解されるのですが、目的地を伝えたら盲導犬が自由自在に連れて行ってくれるわけではありません。ユーザー自身が頭の中に地図を描き、盲導犬に指示を出す必要があります。盲導犬はユーザーの左側を歩き(※育成団体により違いあり)、左側に歩道の曲がり角が現れたら左方向を向いて止まります。それによって、ユーザーは「ここに角がある」ことを察知し、まっすぐ進むか曲がるかを判断して、盲導犬に指示を出します。その繰り返しで目的地まで辿り着くんです。

歩道の途中に人や電柱など障害物があるときは一度右に避け、また左に戻ります。信号の色は盲導犬にはわからないので、ユーザー自身が車の走る音やほかの人の足音を頼りに判断して横断歩道を渡ります。

  • 道路前の点字ブロックで立ち止まるデイズくんと鈴木さん
  • 横断歩道を歩き出すデイズくんと鈴木さん

「ストレート、ゴー」の掛け声で前に進むデイズくん

 屋内ではどんな役割を果たしてくれますか?

鈴木:

たとえばエスカレーターなどは指示を出すと、ステップの手前まで連れて行ってくれますが、上りか下りかまでは盲導犬にはわからないので、ユーザー自身が判断します。お店で商品を選ぶことも盲導犬にはできないので、店員さんにサポートをお願いしています。

 盲導犬と暮らすようになって、やはり外出時の負担は減りましたか?

鈴木:

だいぶ減りました。白杖では高さのある障害物は感知できないので、先ほどお話ししたように車のミラーや木の枝などにぶつかってしまうことがありました。ずっとビクビクしながら歩いていましたが、盲導犬はスイスイ避けてくれるので助かっています。どこかにちょっと外出したいときなどに、家族や友人と一緒に行ったり、ガイドヘルパーに依頼したりすることもありますが、予定の調整に時間がかかります。盲導犬と一緒なら自分が行きたいときに行きたい場所に行けるので、行動範囲が広がりました。

歩道橋の一段目に両前足をかけて登り階段であることを教えるデイズくん。鈴木さんが横に立っている

段差や下り階段の手前では立ち止まり、ユーザーが足を前に出して確認します。上り階段のときは前足を階段に乗せるので、左手に持ったハーネスの傾きによってユーザーは上り階段であることを把握します。空いている座席に案内したり、落としたものを拾ったりする訓練を受けている盲導犬もいます

専用のベルトと袋を使い、床や地面を汚さずに排せつ

専用のベルトと袋を使い、床や地面を汚さずに排せつ

 盲導犬の排せつはどのようにしていますか?

鈴木:

盲導犬は、子犬の頃から「ワン・ツー、ワン・ツー」という合図で排せつするように習慣づけられています。最初はペットシーツに、成長したらベルトで身体に固定した袋へ排せつできるように訓練するんです。雄は小用にワンベルトと大用にワンツーベルト、雌は大小兼用でワンツーベルトを使います。袋の中には凝固剤を入れてあり排せつ物が固まるので、外出時などはにおいが外に漏れない袋で包んでそのまま持ち帰ることができます。

盲導犬に我慢をさせないように、ユーザーが排せつを管理しています。デイズの場合、小は朝、出勤前、昼休み、退勤後、夜と1日5回程度。大は朝と夜の2回ですね。体調によってはそれ以外のときに排せつすることもありますが、そういうときは自分で教えてくれます。外出先ではバリアフリートイレなどの広めのトイレを使うことが多いですが、近くにない場合は人目につかない場所で済ませることもあります。

  • ベルトをつけたビニール袋2枚、凝固剤の入った袋、持ち帰り用の水色の袋がテーブルに並んでいる
  • 下半身にベルトで袋をつけたデイズくん

左/写真左が小用のベルトをつけたビニール袋、右が大用のベルトをつけたビニール袋。右/排せつ用のベルト・袋を装着した様子。身体に固定した袋に排せつするので床や地面を汚すことはなく、処理も簡単です

 外出先での盲導犬の排せつの際、困ることはありますか?

鈴木:

やっぱり、排せつさせる場所を探すことに苦労します。広めのトイレを利用するのですが、近くにない場合もあるので、一緒にいる人や駅員さんに探してもらったりしますね。バリアフリートイレですと、私自身とデイズが排せつするとなると、どうしても10分弱ほどかかります。できるだけ急ぐように努力はしているのですが、外で人が待っていることがわかると申し訳なく感じます。

 バリアフリートイレには補助犬用の特別な設備などは設置していないため、補助犬に関するサインはついていないことが一般的です。

鈴木:

私がバリアフリートイレに並んでいるのを見た人の中には、「どうしてこの人はバリアフリートイレに並んでいるんだろう? ほかのトイレでも問題ないのでは?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないかと思います。サインが掲げられていると、「補助犬の排せつにも使うことがある」とわかってもらえて、気兼ねなく使えるようになるかもしれませんね。

ビニール袋にベルトを装着する鈴木さんの手もと

泊まり込みの共同訓練で排せつのさせ方や道具の使い方を学んだという鈴木さん。慣れた手つきでベルトの装着手順を見せてくれました

 公共施設やホテルなどに「補助犬トイレ」を設置していることもあります。補助犬トイレを使うことはありますか?

鈴木:

近所には補助犬トイレがなく、使ったことはありません。私自身は「補助犬トイレが増えてほしい」という強い希望は持っていませんが、補助犬ユーザーが補助犬トイレを使うことで、車いす使用者の方などのバリアフリートイレを待つ時間が減るのなら、あったほうがいいのかもしれないとは思います。

ただ、すべての補助犬に適したトイレをつくるのはなかなか難しいのではないでしょうか。補助犬たちの犬種はさまざまで、身体のサイズも千差万別です。車いす使用者の方の場合は、高い台があって介助犬がそこで排せつをしてくれたら、排せつ物の処理がしやすいのかもしれませんが、盲導犬の場合は、そういった場所では排せつしづらい気がします。実際に、補助犬トイレを使ってみたものの排せつしてくれなかったという話を聞いたことがあります。どういった設計であればみんなが使いやすくなるかはまだ十分な知見がなく、試行錯誤の段階ではないかと思います。

行きたいときに、行きたい場所へ、あたりまえに行けるように

行きたいときに、行きたい場所へ、あたりまえに行けるように

歩道を歩くデイズくんと鈴木さん。デイズくんは障害物を避けるように歩いている

盲導犬は、視覚に障がいのある人が安全に歩くことを助けてくれる大切なパートナー

 補助犬について、社会にもっと知ってほしいことはありますか?

鈴木:

身体障害者補助犬法により、お店や施設は補助犬の同伴を受け入れるよう義務づけられていますが、まだまだ知られていない状況です。あたりまえのように受け入れてくれるお店が多い一方で、年に数回は受け入れ拒否に遭いますね。ペットと補助犬を同一視している方もいて、「ペットはお断りしています」と言われたこともありました。介助犬や聴導犬は盲導犬よりもさらに認知度が低いので、まず「介助犬とは何か」「聴導犬とは何か」という説明から入る必要があり、さらに大変なのではないでしょうか。

マナーコートを着たデイズくん、「お仕事中です」「盲導犬」と書かれたハーネスバッグのアップ

外出時、盲導犬は「盲導犬」と記載されたハーネスを装着。盲導犬ユーザーにも認定証の携帯が義務づけられています。また、抜け毛の飛散や汚れを防止するため、マナーコートという洋服を着せるユーザーも少なくありません。「盲導犬ユーザーには、盲導犬の行動管理、健康管理、衛生管理をする義務があります。ルールをしっかり守った上で、理解を求めていきたい」と鈴木さん

 入店を断られたときはどのように対応していますか?

鈴木:

厚生労働省が発行している「もっと知ってほじょ犬」というリーフレットを渡して、補助犬法のことを伝えながら、「店が狭いから」と言われたら「座席の下でおとなしく待機できます」、「1人しかいないので対応できない」と言われたら「訓練を受けているので特別な対応は必要ありません」、「座敷が汚れるのでは」と言われたら「足はウエットティッシュで拭きますし、敷物を敷くので汚すことはありません」といった具合に、受け入れ側の懸念点を解消するようにしています。

入店拒否に遭うとやっぱりショックですが、そこであきらめてしまったら私の後に来店した補助犬ユーザーが困るかもしれません。「ほかの人のためにも」と言うとおこがましいかもしれませんが、障がい福祉課で働いている背景もあり、「自分がやらないといけないことだ」と捉えています。視覚に障がいがあっても、行きたいときに、行きたい場所に、あたりまえに行けるように、社会の理解が広がっていくことを願っています。

「もっと知ってほじょ犬」のリーフレットが少し開かれ、表紙と中身の一部が見えている

リーフレット「もっと知ってほじょ犬」はWEBサイトから無料でダウンロード可能(写真提供/介川亜紀)

 仕事中の補助犬に対して「声をかけたり、目をじっと見たり触ったりしてはいけない」といったマナーも大切ですね。

鈴木:

こちらに関しては、ご存じの方は結構多いと感じます。いまの子ども達は学校の福祉学習で学んでいるので、「盲導犬には声をかけちゃだめなんだよ」とほかのご家族に説明している声が聞こえてくることもあります。

小さい頃から障がいのある人とない人が一緒に過ごし、接し方を学べる環境があることが大切なのではないでしょうか。そのために、私自身もデイズと一緒にいろんな場所に出かけ、理解を求めていきたいと思っています。

室内でソファに座ってにっこり微笑む鈴木さんとデイズくん

編集後記屋外での撮影中、鈴木さんとデイズくんが歩く様子は、まさに「風を切って」という言葉そのもの。それは、障がいの有無にかかわらず、誰しもが日々の暮らしに望む自由さ、快適さの象徴のように思えました。その様子を一目見て、補助犬たちの重要さも直感的に悟った気がします。補助犬たちが自在に活躍するためには、彼ら彼女らの情報が浸透するだけでなく、社会全体が優しいまなざしを持つことが大切なのではないでしょうか。編集者 介川 亜紀

写真/鈴木愛子(特記以外)、取材・文/飛田恵美子、構成/介川亜紀  2026年2月19日掲載
※『ユニバーサルデザインStory』の記事内容は、掲載時点での情報です。

Facebookでシェアする

ページトップへ

ユニバーサルデザインStoryについてお聞きします。

このページの記事内容についてアンケートにご協力ください。

Q1.この記事について、どう思われましたか?
Q2.どんなところに興味がもてましたか?具体的に教えてください。
Q3.「ユニバーサルデザインStory」を次号も読みたいと思いますか?
Q4.ご意見がございましたらご自由に記入ください。
Q5.お客様についてお教えください。
性別:
年代:

送信後、もとのページに戻ります。

ページトップへ

Share
  • Facebookでシェアする

CLOSE